うつろい

まるで統一感のない日常のエトセトラ。へっぽこ人生。

結婚して名字が変わるのなんて大したことないと思ってた

結婚して名字が変わるのなんて大したことないと思ってた。

労力的にはまあまあ大したことあったんだけど、精神面で予想以上に辛かったので随分時は経ったが書き残しておこうと思う。

 

2023年の春に婚姻届を出すことにした。

それまでに名字をどうするか話し合った。夫は「男だから」とか「女だから」とかそういうデカい主語で話したりしない人間で、そういうところが好きであり、これを話題にあげた時にはちゃんと私と向き合ってくれた。

けれど、なんとなく私が変えるんだろうなとは思っていた。

このタイミングで転職することにしたので仕事にも影響しないし、好きな人の名字になるのもまあ悪くないと感じていたのが理由だった。ただ、もし前職を続けるのであったら、事実婚を選択していただろう。ある日を境に職場で別の名前で呼ばれるなんて、今まで頑張ってきた私の会社員人生がまるでなかったように感じてしまうのが容易に想像できてとても怖かった。

また、夫が「(私の名字)にするのもかっこいいよね」と言ってくれたのもかなり後押しになった。もし、私が夫の名字にするのが当たり前な流れだったら結婚自体に二の足を踏んでいただろう。この一言で、きっと逆の立場でもこの人とは同じ目線で話せるだろうなと思った。あくまで想像にすぎないが、私には大事なことだった。

そういうわけで私が夫の名字に変えることにした。

 

覚悟は決めたものの、婚約期間は結構ナーバスだった。これがマリッジブルーってやつ?

どうにかこの婚約期間中に選択的夫婦別姓制度が承認されないか、毎日関係するニュースをチェックしていた。本当に何なんだろうか、「家族の絆が崩壊する」って。好きな人の名字になるのもまあ悪くないと感じていたが、強制的に同姓にしなければならないことに疑問を抱いた。

「家族の崩壊」はダメで、個のアイデンティティの揺らぎは考慮されない。今まで人生を共に歩んできた名字+名前がリセットされるのに。生まれ持った名字+名前のセットを保持したい人間が婚姻制度の代償として名前を強制的に変えなければいけない理由、なくない??

もちろん生まれ育った環境が悪かったり、名字自体にこだわりがなかったり、積極的に変えたい/変えてもいいという人もいると思う。だからこその「選択的」なのに。一個人がやいのやいの言っても仕方ない。とりあえず署名だけはした。

www.change.org

 

制度に対する不満は残るものの、前述したとおり名字が変わることに反対する条件もそろっていなかったので婚姻届には「夫の氏」にチェックを付けて提出した。繰り返しだが、前職を続けるつもりなら事実婚を選択していただろうし、夫が情緒的に寄り添ってくれなかったら付き合い自体を考え直していただろう。

 

婚姻届を提出したら、運転免許証や銀行、クレジットカードの名義も変えていく。口座は複数あるし、いちいち添付書類を紙で提出しないといけないところはとてつもなく面倒だった。

この時点ではただひたすらに面倒という感情だけだった。マイナンバーカードがこの仕事を一気に引き受けろと思っていた。

 

しばらくして、通販サイトの名前を変更する。さすがに配達関係は新しい名字がいいだろう。旧姓でも届くが、ゆうパックは荷物の宛名と配達先の住人をちゃんとチェックしている(気がする)。※結婚前、実家帰省中にAmazonの荷物を実家の住所・私宛に届けたら「今ここに住んでます?」と聞かれた。帰省中に荷物を届ける場合は家族宛にすべきらしい。今どういう風になっているかは分からない。

この時には少しずつ結婚した実感が湧いてきて、配達の方から新しい名字で呼ばれるのが恥ずかしうれしだった。

 

また少し経って、次はオンラインサービスの登録名を変える。よく使うアプリやメルマガがよく来るサイトから順に変えていく。

そうしたら、最初は作業的に名前を変更していたのに、急に自分が消えていく気がして怖くなった。「変更が完了しました」とページが表示されるたび、「以前のあなたはもういません」と言われているようで、自分で自分の存在を消している気分になった。帰り道のバスの中で泣きそうになって急いでスマホを鞄にしまった。

まさか自分が名字を変えたことで泣きたくなるとは思わなかった。好きな人と同じ名字になれたうれしさも、自分が消えていくような悲しさも同時にあって心がぐちゃぐちゃだった。そのときに誰かに吐き出せればよかったんだけれど、誰にも言えなかった。誰かに言っても仕方ないと思った。ブログに書こうとも思ったんだけど、心が不安定で無理だった。

なぜ今になって書いているかといえば、年の瀬で今年を振り返ってみたら、一番強烈に感情が動いた出来事だったなと思い出したからである。どうやって心の平穏を取り戻したかと言えば、何もしていない。無理に忘れようとせず、一旦そのままにして日々過ごしていたら、夫と本当の意味での家族である実感が湧いてきて気にしなくなった。使っているオンラインサービスの中には新しい名字に変えたものと旧姓のままのものが混在している。もうそれでいいやって。

だからといって強制的夫婦同姓には賛成できないからな!少しでも違う状況だったら未だに悩んでいただろうし、今まさに悩んでいる人がいるはずなので、この制度のままでいいと思うなよ日本。

2000字超えの長文だけど、もし最後まで読んでくれて色んな感情を抱いてくれる人がいたらいいなと思う。いろいろあるけど、よいお年を。